将棋と算数

「将棋をすると算数ができるようになるか? 算数ができる子だから将棋も強くなるのか? 」という子ども将棋界の「鶏が先か、卵が先か」問題は、将棋キッズの親であれば誰しもが考えたことがあるでしょう。

実際、将棋の強豪中学・高校はだいたい難関進学校だったりするので、将棋をやれば うちの子でもちょっとは頭がよくなるかも?と期待してしまいますよね。

将棋をすることで算数が得意になる要因として、右脳(直感力)が鍛えられるとか、論理的思考が身につくとか、集中力がつくこと等が挙げられているようですが、これらが算数のレベルアップに結びつくと言われても釈然としないと思っていました。

また、将棋で考えることは互いの駒の動きであって、数字は関係ありません。「算数が得意→基本的に頭が良い→将棋も得意」は成り立つとしても「将棋をする→算数が得意になる」にはちょっと疑問符がつきます。

 

さて、小田敏弘氏の「本当の算数力」を読みました。

本書は、受験でいう「捨て問」(ほとんどの受験者が解けない問題)や算数オリンピックに出てくるような一見するだけでは何をどうすればよいのかわからない問題を解けるようにする算数(「解く」算数)を解説しています。一方、決まった解き方をたくさん覚えて、問題を見たときに適した解法を使って数字を当てはめるだけの算数を「処理する」算数と呼んでいます。

受験では「解く」算数の問題は捨てて「処理する」問題に徹して合格点を取るというのが基本戦略だと思います(超難関校は除く)。受験をクリアするだけならそれでも十分なのですが、「処理する」算数には伸びしろが少なく、いくら「処理する」算数の練習をやっても「解く」算数ができるようにはなりません。そして、「算数ができる子」というのは「解く」算数ができる子なのです。

 

そもそも、算数の力というのは「技術」「理論」「センス」の3つから成り立っています。このうち「解く」算数ができるようになるには数字・算数的なものを扱う「センス」が必要となります。

「技術」を重視すると、処理方法をひたすら覚えて素早く使えるようにすることが目標になって「処理する」算数を学ぶことになります。一般的な塾では色々な「技術」を教えてくれますが、「処理する」算数は処理を覚えるだけなので学問としての面白さはありません。

「理論」を中心に教えるということは「なぜそうなるのか」「なぜこれでできるのか」という学問的な部分にフォーカスします。これは算数に興味を持つ一部の層にとっては面白い授業になり得ますが、算数が苦手な子には「処理する」方法を覚えるより苦痛になります。学校では「理論」を教えることに重きを置いていますが、決められた時間内に全員ができることが必要な義務教育の中では中途半端になりがちです。

 

じゃあ「解く」算数に必要な「センス」はどうなってるの?となりますよね。

「センス」は個人差の大きい「才能」として扱われ、これを磨く機会は算数教育の中では提供されていません。「センス」というのは算数の勉強から離れた日常の中でそれぞれが自分で身につける必要があるのです。そして「算数ができる子」は先天的に、またはどこかで物事への取り組み方や考え方を後天的に身につけてきて、それを算数に利用しているのです。

どうやって「センス」を身につけるのかについては本書では触れられていませんが、「センス」がある子の特徴が提示されており、その一つに「試行錯誤」する姿勢が挙げられています。

問題をあーでもないこーでもないと「試行錯誤」することが算数を「解く」ためには重要であり、「正しい解き方は1つしかない」という思い込みや「失敗を恐れる」ことは「試行錯誤」の邪魔となります。

 

話が長くなりました。

将棋を指す子供達は何十、何百局と指し続けています。感想戦や指導対局を通して(上達には差がありますが)少しずつ悪手を減らし良い手を見つけていきます。まさに試行錯誤の連続です。また、アマチュアの将棋であれば局面での候補手は一つではありませんし、失敗を恐れず決断の一手を指すことの必要性も身をもって体験しているでしょう。

駒の動きをいくら考えても算数の「理論」や「技術」そのものは身につきませんが、子どもたちは将棋を通して算数を「解く」うえで必要な「センス」を磨いていると言えそうです。

興味がある方は是非本を手に取ってみてください。

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かつどん
製薬企業で働くアラフォーサラリーマン。東京在住 大阪出身。 息子の将棋成長記録や棋具の話を中心に更新しています。 モットー:明日できることは明日やる
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